自分らしく

想庵にて〜2020. 早春〜

椿

想庵には、2本の椿が植わっています。「白玉椿」と「太郎冠者」。ともに小さくすぼまった形の花をつけ、楚々とした風情が気に入っています。

「太郎冠者」というのは、よく大名や侍の召使として狂言に登場する役の名前ですが、物を知らなかったり、早とちりしたり、失敗をしでかしたり、それでいながら主人をだまくらかそうとするなど、滑稽で憎めない人物です。そんな太郎冠者という名前をつけられた我が家の椿。愛らしい桃色の可憐な花なのにどうして…。名付けた人の心を知りたいところです。一枝を土器に投げ入れ、手元に置くと、あたりが何とも暖かくなりました。

心を込める

先日、茶懐石「辻留」の辻嘉一氏をテーマに文庫を開催しました。料理本をはじめとしてエッセイや対談集などたくさんの本を出していらして、読むたびに感心するところの増えていく方です。

今では品種改良されたものや外国産のものなども含めて、数多くの食材が一年を通して手に入るようになっています。また、忙しい暮らしに役に立つ出来合いのものや時短料理などというのも流行ってきています。それらをもって豊かな時代になったという解釈もありましょう。

辻氏は、食材の旬を大切にすることはもちろん、食べる人の年齢、出身地、体調などを念頭に調理し、器や盛り付けにも心を配ること、それこそがもてなし(「おもてなし」などとは言いません)であると、所々で書いています。そして、そのもてなしがごく自然になされるのが家庭料理であるとも。

食材に季節のめぐりを感じ、自然に感謝しつつ、食べる人の喜ぶ顔を思い丁寧に調理する。心を込めるということは確かにゆっくりとしていて現代的ではありませんが、これこそが豊かな暮らしにつながるのではないかと思われます。

本屋さん

ちょうど一年前、近所に『小鳥書房』という小さな本屋さんができました。レトロな雰囲気のガラス戸を入ると、中には心惹かれる本が並んでいます。良い本を作りたい、と出版も手がけているそうです。二階をちょっとしたイベント会場として貸し出しています。個人商店の本屋さんが少なくなり、寂しさを感じていたところだったので、本を買ったり、二階をお借りしたりと、交流を続けていきたいと喜んでいます。

サポーター

みうら ゆきこ
みうら ゆきこ
元高等学校教諭。
現在は都内の病院のがん情報センターに勤務、がん患者サロンの運営に携わる。
一方、日本舞踊、江戸小唄をはじめ日本の伝統文化をこよなく愛する生活を送っている。

プロフィール