乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

苦難に臨んで(1)

以前のコラムで「生老病死」という四苦は人生の理とお伝えしました。好いことばかりなら最高かもしれませんが、「好いことばかりだと、本当に何が好いことなのかさえわからなくなる」というのが、我々凡夫というものです。苦に遭遇するから楽がわかるというのも皮肉ですが、だからといって苦ばかりは辛いですよね。なかでも大きな苦難はことさらです。しかし、これは人生のなかで一度や二度は遭遇してもおかしくはないことも事実なのです。

そこで、そんなときに多少なりとも心穏やかにいられるヒントについていくつかお話したいと存じます。

まっ先にできることをする

まずは、「なんで?」「どうして!?」から早く離れることです。弘法大師空海の言葉に、「毒箭を抜かずして空しく来処を問う」というのがあります。これは、「刺さった毒矢を抜かずにどこから飛んできたのかばかりに気をとられていると、命そのものが危うくなる」という意味です。起こったことは決して後戻りしないのですから、「なんで?」「どうして!?」より今すぐ何をすれば最善なのかを考えろという教えです。

ビジネスでもクレーム処理は第一優先とされますが、初動を間違えると事態はより悪化します。ですから、辛くても困難時こそ起こった問題に正面から向き合い、何をすれば被害を最小限に食い止められるかに気持ちをシフトする必要があります。平たく言えば、優先順位をよく考えて動くということです。

悲観も過信もしない

重い病気に罹ったとき、「なんで自分が?」という思いに押し潰されそうになりますよね。これは、前段の「なんで?」「どうして!?」よりダメージが大きい孤独な苦だと思います。しかし、そういうときこそ一人で抱え込まず胸の内をさらけ出し、周りにいる人を信頼することです。自分の力でどうにもできないことは他者の力を借りるしかないのです。どうすれば最強の力を借りることができるかは次回のコラムでお話しますが、まずは現実から逃れず目の前にある問題をしっかり俯瞰することです。悲観ではなく客観です。

もうひとつ、普段から「自分だけは大丈夫」的な過信をよく見受けますが、こんなことはまったく保証されたものではありません。誰にでも起きることは自分に起きても不思議ではないからです。まさに「一寸先は闇」と思い、慎重さを兼備することが窮地を脱する最善につながろうというものです。

合掌

サポーター

真船雅永
真船雅永
僧侶、M&Tビジネスキャリア研究会代表。

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