乳がん生活:乳がんについて:基礎知識

〈乳がん〉の再発・転移とは?

再発と転移って違うの?

「がんが再発した」「転移した」と聞くことがあると思いますが、再発と転移とは何が違うのでしょうか? 初期治療で、手術をした側の乳房やその周囲の皮膚やリンパ節に発生するものを『局所再発』といいます。乳房温存手術後の乳房や、乳房全切除術後の胸の皮膚や手術を受けた側のわきの下、乳房に近いリンパ節に起こるそうです。

〈乳がん〉の遠隔転移

一方、肺、肝臓や骨(特に背骨や肋骨)など、乳房とは離れた部位に発生するものを『遠隔転移』(遠隔再発)といいます。たとえば肺に〈がん〉がみつかり、これが〈乳がん〉からの転移であれば〈肺がん〉ではなく、「〈乳がん〉が肺に転移した」(肺転移)となります。〈乳がん〉ができ始めたころから微小転移という形で潜んでいたものが、再発を予防する初期治療もすり抜けて(生き延びて)、何年か後に目にみえるくらいに大きくなってみつかるというわけです。

『遠隔転移』の場合、最新の医療技術や薬剤をもってしても〈がん細胞〉を完全に消すことはたいへん難しいといわれています。したがって、この場合、いかに〈がん〉の進行を抑えていくか、いかに症状の発生を抑えたり減らすかを目指す治療に切り替えることになるそうです。

再発と転移の治療とは

『局所再発』と『遠隔転移』とでは、治療の考え方が大きく違ってきます。

●局所再発の場合
手術で再発巣を切除し、さらなる再発を防ぐため薬物療法や放射線療法が行われます。

●遠隔転移の場合
〈がん〉の進行を抑え、症状の緩和が目的となります。乳房から遠く離れた臓器に転移が発生したということは、画像検査でみつかった病巣以外にも目にみえない〈がん細胞〉が全身に潜んでいるわけですから、すべてを根絶するのは難しいのが現状です。

慢性疾患と同じように〈がん〉と共生するという考え方

そのため、転移の場合は〈がん〉の治癒(ちゆ)を目指すのではなく、〈がん〉の進行を抑えたり症状を和らげたり、QOL(生活の質)を保ちながら〈がん〉と長く付き合う「共存するための治療」となります。糖尿病や高血圧といった慢性疾患への対処と同じで、「病気を抑えながら長く付き合う」という考え方ですね。

再発・転移がわかったときのショックは、最初に〈がん〉と診断されたときよりも強いといわれています。〈がん〉診療連携拠点病院にある相談支援センターで相談したり、患者会に参加したり、不安が強い場合には、こころの専門家に相談するのもよいかもしれません。

▼患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版
https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g6/q40/

▼〈乳がん〉のファーストオピニオン
https://firstopi.jp/screening/recidivation/recidivation_drhayashida/

サポーター

緒方佳美
緒方佳美
外資系企業数社を経て退社。
その後、乳がん発症。トリプルネガティブと診断され、術前抗がん剤治療、部分摘出手術、放射線治療を経験。家族にもがん体験者あり。治療中から、がんと仕事の両立支援や、がん体験者のための支援活動を考える。乳がん体験者コーディネーター(BEC)認定。
2018年10月、株式会社オフィスオガタ設立(人材紹介・コンサルティング業)。
多様性を認める社会形成への貢献を意識し、東北支援活動、地元の景観まちづくりの会での活動を通じて地域とのつながりも大事にしている。

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