乳がん生活:乳がんについて:基礎知識

『がん対策推進基本計画』とは

『がん対策推進基本計画』って何でしょうか?

『がん対策推進基本計画』については、厚生労働省ホームページに次のように記載されています。

「がん対策基本法(平成18年法律第98号)に基づき策定するものであり、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策の基本的方向について定めるとともに、都道府県がん対策推進計画の基本となるものです」

生涯で〈がん〉にかかる可能性が2人に1人といわれ、年間約100万人が〈がん〉と診断されています。さらに加齢による〈がん〉の発症リスクが高まり高齢化が進行している日本では、1981年より死因の第一位であり、私たち全員が他人ごとでない身近なものとして捉える必要性が高まっています。患者に加えて家族や職場の方など、共にがんに向き合う人口はもっと多いのです。

そのような状況から、2007年に『がん対策基本法』が施行されました。そして『がん対策推進基本計画』はこの『がん対策基本法』法に基づき、長期的視点に立ち、がん対策の計画を進めるために5年ごとに策定されています。さらに、これに基づき『都道府県がん対策推進計画』が整えられていきます。

第1期から第3期基本計画

第1期の基本計画は2007年に策定されました。ここでは、がん診療連携拠点病院の整備、緩和ケア提供体制の強化、地域がん登録の充実が図られています。

その5年後、2012年に策定された第2期の基本計画では、小児がん、がん教育やがん患者の就労を含めた社会的な問題への取組が盛り込まれました。

2018年に策定された第3期基本計画では、「がん患者を含めた国民が、〈がん〉を知り、〈がん〉の克服を目指す」ことが目標とされました。「がん予防」、「がん医療の充実」「がんとの共生」の3本の柱の対策が推進されたことに加え、新たな課題として、AYA(Adolescent and Young Adult)世代(思春期世代と若年成人世代)の〈がん〉や、高齢者の〈がん〉といったライフステージに応じたがん対策やがんゲノム医療の推進などが盛り込まれています。

誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民と〈がん〉の克服を目指す

第3期基本計画の見直しを行い、第4期基本計画では「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」が全体目標とされました。第3期の3本の柱である「がん予防」、「がん医療」及び「がんとの共生」に取り組みつつ、全体目標、分野別目標及び個別目標と各施策の関連性を明確にし、PDCAサイクルを使っていくことが決まりました。

「がん予防」として、〈がん〉の1次予防(生活習慣、感染症対策)、がんの2次予防(がん検診:受診率向上対策、がん検診の精度管理など、科学的根拠に基づくがん検診の実施)が盛り込まれています。

また、「がん医療」として、がん医療提供体制(医療提供体制の均てん化・集約化、がんゲノム医療、手術療法・放射線療法・薬物療法、チーム医療の推進、〈がん〉のリハビリテーション、支持療法の推進、〈がん〉と診断されたときからの緩和ケアの推進、妊孕性温存療法)、希少がん及び難治性がん対策、小児がん及びAYA世代のがん対策、高齢者のがん対策、新規医薬品、医療機器及び医療技術の速やかな医療実装が挙げられています。

「がんとの共生」では、相談支援及び情報提供(相談支援、情報提供)、社会連携に基づく緩和ケアなどのがん対策・患者支援、がん患者などの社会的な問題への対策(サバイバーシップ支援)(就労支援について、アピアランスケアについて、がん診断後の自殺対策について、その他の社会的な問題について)、ライフステージに応じた療養環境への支援(小児・AYA世代、高齢者)が記されています。

以上のように、第4期基本計画は予防や医療そのものに加え、より患者に寄り添った内容になったと感じます。最近話題になっているHPVワクチン(子宮頸がん)接種推奨、がんゲノム医療の推進、チーム医療、がんリハビリテーション、支持療法・緩和ケアの推進、相談体制の強化、サバイバーシップ支援など、「患者として、こうであったらいいな」と思うことが取り入れられていて、策定にあたり患者、市民の参画が感じられる内容になっているのではないでしょうか。

▼厚生労働省 がん対策推進基本計画
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html

サポーター

緒方佳美
緒方佳美
外資系企業数社を経て退社。
その後、乳がん発症。トリプルネガティブと診断され、術前抗がん剤治療、部分摘出手術、放射線治療を経験。家族にもがん体験者あり。治療中から、がんと仕事の両立支援や、がん体験者のための支援活動を考える。乳がん体験者コーディネーター(BEC)認定。
2018年10月、株式会社オフィスオガタ設立(人材紹介・コンサルティング業)。
多様性を認める社会形成への貢献を意識し、東北支援活動、地元の景観まちづくりの会での活動を通じて地域とのつながりも大事にしている。

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