自分らしく

時を経て想いをつなぐアクセサリー

母から贈られた淡水パール

友人の紹介でコットンパールのロングネックレスをご依頼いただいた方からリメイクのご相談があり、お目にかかったときのことです。「ついでと言ってはなんですが、これって、なんとかならないでしょうか?」とクローゼットの奥から持ってこられた包みには、淡水パールのルースの連束が入っていました。「ルース」とは、まだジュエリーに加工されていないもののことで、一粒一粒を糸などで連なるようにまとめてあるものを「連」といいます。

ざっと拝見したところ、淡水パールが10連ほどありました。「こんなにたくさんのパール、どうされたのですか?」と伺うと、20年ほど前にお母様よりもらい受けたものの、どうすればよいかわからず、そのままずっと保管をしていたとのことでした。

淡水パールに込められた想い

真珠は古来より女性の装飾品として親しまれ、「月の雫」「人魚の涙」とたとえられたほど大切にされてきたといわれています。一般的には冠婚葬祭などの儀式に使われることが多い宝石ですが、最近ではもっとカジュアルにパールを楽しむ方が増えてきました。淡水パールは主に日本や中国で養殖されていますが、需要の増加に伴い希少価値も上がっており、本真珠よりはリーズナブルだとはいえ、高品質のものは入手が徐々に難しくなっているといわれています。

ご相談を受けた淡水パールは、20年ほど前に入手したとは思えないほど綺麗で状態も良く品質の高いものでした。真珠には、女性の美や健康を後押しするパワーがあるともいわれており、娘を思う母の願いが込められているようにも感じました。

一粒一粒をつなぎながら

状態がよく十分な量もある素材を活かすにはどうすればいいかと思案した結果、5連のネックレスとブレスレットのセットアクセサリーをつくることになりました。

制作にあたっては、パール一粒一粒の間に結び目をつくりながらつなげるオールノット方式で仕上げました。オールノットはもし糸が切れた場合でもパールがばらばらにならないという利点がありますが、一粒ごとに結び目をつくりながら進める作業なので手間と時間がかかります。それでも母娘のそれぞれを大切に想う気持ちと共に存在した素材を、20年という時を経て完成品へとつくり変える作業に携われたことを感謝せずにはいられない貴重な時間となりました。

サポーター

ひらい まさよ
ひらい まさよ
アクセサリー作家。
子どもの頃から「装う」ことに興味津々。外資系企業勤務のかたわら、全身のコーディネートに欠かせないアクセサリーづくりを独学で始める。大人ならではの装いのアクセントでありつつ、気負わずにさらりと気軽に身に着けられるアイテムづくりを目指す。
被爆者であった父の悪性リンパ腫、大腸がんの10年以上にも及ぶ闘病に寄り添い、夫をも膵臓がんで失うという経験をもつ。

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