自分らしく

般若心経の極意

『般若心経』は世界一短いお経

私たちは日中、常に五感を働かせ、心(意識)でものごとを感じながら、悩み、喜び、泣き、苦しみながら生活しております。人との絆や縁に喜び、人との争いや憎悪に苛まれるたりするのも、すべて五感を通じて私たちの心が感じていることです。同じ事象なのに、条件が違うと善くも悪くにも感じてしまうことがよくあります。

世界でもっとも読まれている世界一短い仏教の経典『般若心経』は、わずか二百数十文字のなかに心の動きや物の実体の原理が書かれています。まさしくお釈迦様の教えが凝縮されたお経で、これを理解して実践することで生きやすくなるお経なのです。

『般若心経』とは、どんなお経?

西遊記に登場する三蔵法師をご存じだと思います。彼は名を玄奘(げんじょう)といいますが、三蔵法師と呼ばれています。それは「三蔵」に精通する大僧侶だからです。三蔵とは経(釈迦の説いたとされる教え)、律(道徳や生活様式)、論(仏教の理論や思想)の三つであり、それらすべてに通じる僧は滅多にいません。

唐の時代。玄奘は幼いころからたくさんの寺で修行して多くの経典を勉強しておりましたが、最後には原点であるインドへ渡ってたくさんの大乗仏教の経典を持ち帰り、中国語に訳しました。玄奘が訳した600巻に及ぶ『大般若波羅蜜多経』は通称『大般若経』とも呼ばれ、般若経の集大成となりました。この600巻の内容を、260~270文字程度に集約したものが『般若波羅蜜多心経』で、略名『般若心経』と呼ばれています。

『般若心経』には、何が書かれているのか?

観音菩薩が、釈迦の十大弟子のひとり「舎利子(シャーリプトラ)」に「空」(※)の原理を説くという設定です。表題の「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」というのは、「[仏説]仏さまが説いた[波羅蜜多]彼岸に到るための[摩訶]どえりゃあ[般若]智慧の[心]本当の[経]教え」という意味です。

構成としては、「すべての存在は移り変わる」という「空の智慧」=「般若波羅蜜多」を説く前半部と、般若波羅蜜多の力を説き、真言(マントラ)に要約する後半部に分けられます。前半部に無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法、という言葉があります。先の句は「五感で感じて感じるものは固有の実体がないのだ」ということ。後の句は「五感で感じた事やこの世界自体、不変の実体があるわけではない」という意味です。さらにそれらの2句の前に「照見五蘊皆空」とあり、「ものごとのありようは心も含めて、全て条件によって変わるもの」とも書かれています。

これらが般若心経が教えてくれる仏教の真髄です。私たちの世界で不変であるものは無いのだから、しかも感じているものは現象であって実体ではないし、外的要因で変化するのだから、こだわりを捨てて素直に生きよということです。

※「空」とは、仏教に於いて「世界には実体がない」ことを表しています。

何もないというけど、苦があるじゃないか

私たちは日常生活のなかで、さまざまな苦と向き合っています。しかし、これらの苦は外界から押し寄せるものではなく、実は自分自身への執着から生まれるのだと、般若心経には書かれています。「苦」とは「苦しみ」ではなく「思いどおりにならないこと」と考え、すべての事象は不変の実体をもつものではなく、深い智慧により執着を離れることで悩みや苦しみから解放されると書かれてます。

「思いどおりにしたい」という欲望を解決するには、「思いどおりなってしまう」か「思いどおりにしたいと思わなくなる」かです。たとえば「彼女と結婚したい」という人の「苦」を取り除くには、「彼女と結婚する」か「彼女と結婚したいと思わなくなる」の二つです。ものごとに執着せず、多様に変化する世界や縁起のなかで私たちは「思いどおりにしたいと思わなくなる」ことが重要です。これには周囲の人たちやものごとへの観察や智慧が必要になります。

「仏教」を頼りなく感じるのは、結局のところ「心のもちよう」みたいなところと、教えの中心に「神」という不動の存在がなく、中心にあるのが「空」という「無い無い尽くし」のようなところだといつも思います。しかし、家内と喧嘩した夜は、「僕の意見を通したいと思わなくする」のが、やはり夫婦円満のコツなんだよなと般若心経の教えに従いたくなります(笑)。

仏説摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中 無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多 是大神咒 是大明咒 是無上咒 是無等等咒 能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多咒 即説呪曰
羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提僧莎訶 般若心経

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福田正文
福田正文
1955年、羊年の山羊座生まれ。
2017年、大阪でコーヒー焙煎卸会社を経営。現在はマンションに建て替えて「悠々自適になる」つもりが、そうでもない状況。
千葉市在住。千葉ではパソコンメンテとWEBサイト制作会社を経営。
趣味はパソコンの組立&再生、ピアノとギターの演奏、読書。

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