乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

少しでも不安をなくす~医師とのコミュニケーションなど

乳がん知識ゼロからのスタート

針生検の結果説明当日、医師から「浸潤がん」という病名を告げられたものの、〈乳がん〉についての私の知識はゼロに等しいものでした。帰宅後は病院で渡された〈乳がん〉患者用のガイド冊子を片手にネットサーチしまくり、にわか患者なりにおおまかな知識を得ることができました。しかし、膨大な情報量のなかからほんとうに自分に合致するものを見つけるのは難しく、発症のショックもあいまって精神的な負担は大きかったです。

担当医とのコミュニケーション

当然のことながら、自分にとっての最適で最大の情報を得るためには、担当医とのコミュニケーションがもっとも重要でした。幸い、主治医の説明は非常に具体的で、こちらの質問にも丁寧に答えていただけました。手術方法として部分切除か全摘かを決める際には、想定される切除範囲を実際にマーカーで胸に描いてもらいましたし、手術後の体の動きについても細やかな指導を仰ぐことができました。

ちなみに、私は術後の経過がよかったためか、入院中にも1日3回ぐらいは手を真上まで上げてみるよう指示されました。かなり痛かったのですが、「手術直後でもここまで腕を動かすことができるんだ」という自覚が、退院後のリハビリの励みになりました。これはもちろん傷の治り具合や手術のダメージに個人差があるので、あくまでも主治医の指示に従うことが前提です。

診察時はメモの用意を

診察を受けるにあたっての私自身の反省点もあります。まず、まとまった説明を受ける際には、メモの用意をすべきでした。私は基本、家族と一緒に説明を受けたのですが、後に私と家族で微妙に理解が異なっていたりするのです。こちらからの質問も気づいたときに箇条書きにしておくと聞きそびれを防げますし、質問が要領を得なくて忙しい医師の時間を無駄にすることもありません。

不安は持ち越さない

また、些細なことだからといって気後れして医師に相談しなかった結果、余計な心配を長々とひきずってしまったこともあります。針生検後に大きなしこりができたときは(実際には組織採取による血腫だったのですが)、〈がん細胞〉が一挙にひろがったような気がして1か月以上も憂鬱な日が続きました。

反対に、全身麻酔時気管挿管後の喉の違和感がなかなかとれず担当医に不安を告げたところ、「4日目ぐらいにはだいぶ良くなる人が多いですよ」と声をかけてもらっただけで、気持ちがぐっと楽になりました。闘病中は不安を抱えたままにせず素直に担当医や看護師に伝え、心配事を一つでも減らしていくのが大事だと思いました。

とはいえ、今でも何が正解だったのか迷うこともあります。退院後、術部皮下に体液が溜まってきてパンパンに膨れ、ピーク時の10日目あたりには歩いた振動で胸が痛むほどになってしまいました。おそらく、病院へ連絡すれば液を抜く処置をしてもらえたはずですが、本調子ではない体で電車に乗ることや病院での待ち時間を考えると躊躇したのも事実です。

退院前に医師から「破裂することはないですよ」と告げられていたので我慢できたと言えば言えますし、ピークを過ぎて体が自然に液を吸収し始めると痛みも一挙に楽になりました。ただ、退院時から次回の診察までの間に想定される事態とそのときのアクションについては、もう少し突っ込んで医師に確認しておけばよかったかもしれません。

サポーター

田原真理
田原真理
大学卒業後、数年間、金融会社に勤務。その後、日本語教師を目指すも挫折。専業主婦、子育てを経て、現在はコンサルティング会社で主に経理業務を担当。
2021年に〈乳がん〉の診断を受け、右乳房全摘。2022年初よりホルモン療法中。

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