自分らしく

その歌

その歌

初めて聴いた時から
目の奥で生まれる涙に
気づいていた

なぜだかその歌詞を
聞き逃せない自分に
気づいていた

今日はわかる
それがさよならの
予習だったのだと

床に寝ながらもう一度
身体を揺らさないように
そっと聴く

この歌を普通に
口ずさめるようになったら
さよならを卒業できるのかな

朝の目覚ましタイマーは、J-WAVEです。毎朝夢のなかに音楽が滑り込んできて、ゆっくり目覚めることができます。15分後に電子音の目覚まし時計が鳴るまでの楽しいひとときです。

流れてくる歌の歌詞に気分がふわりと舞い上がったり、勇気が湧いたり、心を激しく揺さぶられたりします。また、なにか隠していた心の底を掘り起こされているような落ち着かない気分になるときもあります。はっとしてベッドから起き上がり、曲名やアーティストをメモすることもあります。

歌詞がもつ意味と、歌い手の声と、それがのせられていくメロディとが聴き手の心に入りこんで、いろいろな反応を呼び起こしているのでしょうか。あまりに自分の心を深く掘り起こされた気がするときは、歌そのものに嫉妬してしまうこともあります。

なかでも恋愛を歌った歌が一番多く流れているように感じます。

自分の人生を振り返ると、10代のはじめは未来の予習として恋の歌を聴き、10代後半はときに現在進行形として聴き、20代はかなり深刻に心を寄せて泣いたり笑ったりしながら聴いていたと思います。

そうやって私を通り過ぎていった数知れぬ恋の歌は心のどこかに潜んでいるのでしょうか。恋愛が現在完了形となった(?)今でも、ふっと聴いた歌で、不意打ちのように過去の想いに引き寄せられることがあります。

そんな懐かしいメロディや歌詞が流れる番組はもちろん楽しいのですが、それよりも、まだまだ新しい恋の歌が新しいスタイルで限界を感じさせずに生み出されていることに驚いているこのごろです。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール