乳がん生活:患者力:頼れるプロ
手術前から知っておきたい手術痕の知識
初めまして、パーソナルトレーニングと鍼灸治療をしている塩川です。
傷口のセルフケアについて病院で説明されているかもしれませんが、こちらではより詳しく、以下の項目に分けてご説明します。
①手術後の皮膚はどうなっているのか?
②放置するとどうなるのか?
③自分でできる簡単なセルフケア
専門的な用語があり、「難しいな…」と感じる方は、③から読んでいただくことをお勧めします。
①手術後の皮膚はどうなっているのか?
ヒトの皮膚には表面の角質がある「表皮」、血液や神経が豊富な「真皮」があります。「表皮」は外部の刺激から身を守り、「真皮」は新しい皮膚を生み出す「ターンオーバ」という重要な役割を担っています。それぞれの層にはクモの巣のような膜「ファッシャー」が張り巡らされていて、粘性の高い水分を多く含み、皮膚運動をスムーズにする働きや他の層同士がくっついて癒着しないよう境界をつくる働きがあります。
手術で切り開いた部分はそれぞれの皮膚層を布と布を引っ張り合うように縫い合わせるため、傷口は盛り上がり、周りの皮膚はわずかに引っ張られた状態になっています。
②放置するとどうなるのか?
手術をしたまま放置すると、テカテカした手術痕になります。これは「真皮」の血流が悪くなってターンオーバーサイクルが乱れることが原因です。最近では縫い方を工夫したり、糸を改良することで目立たなくなっていますが、ファッシャーは水分量が減り粘性がなくなるため、皮膚同士が癒着して突っ張ったり、痛みを引き起こしてしまいます。
あまり知られていませんが、皮膚同士が癒着すると関節の動きを妨げたり、筋肉の働きを鈍らせるため姿勢の崩れや膝痛、腰痛の原因にもなります。
③自分でできる簡単なセルフケア
手術直後は消毒・保湿・保護をして、皮膚表面を傷つけないことが重要です。最近は消毒液の使用により傷口を刺激したり、皮膚表面にいる常在菌も消毒してしまうため、流水で清潔にすることが多いです。傷口の大小や状態により方法は変わりますから、病院で一度相談することをお勧めします。清潔なガーゼと病院でも使用している「ドレッシングテープ」は、保湿・保護に役立ちます。市販で購入でき、表面が濡れても水分を弾いてくれるので傷口を清潔に保ってくれます。
抜糸後は、皮膚運動を促すことが重要。上下左右、色々な方向に動かしていきましょう。このときに痛みや痺れが出ない範囲で行ってください。皮膚運動ができたら、今度は可動範囲トレーニングを行ってください。可動範囲トレーニングについては以前、長尾トレーナーが以下の記事で掲載していますので、そちらをご覧ください。
手術痕をできるだけ小さく、目立たなくするためにできるセルフケア。ご自身だけでなく、ご家族・ご友人にもぜひお勧めください。
サポーター
- 1988年1月1日生まれ。
鍼灸師免許取得後、都内の鍼灸整骨院や病院、デイサービスで働くと同時に、先天性心臓疾患の子どもたちに施術や運動療法を行う。病院勤務時代には、末期癌患者様への緩和ケアを経験。
現在、パーソナルトレーニングと鍼灸マッサージでコンディショニングを整える『TEETER TOTTER』に所属。休日には、『EURO football academy』のGKコーチ兼トレーナーとして活動。
プロフィール
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