自分らしく

あなたを癒すその花も生きていることを知ってほしい

花を背景にポートレート撮影をする機会の多い私は、春の訪れとともに花の咲く場所を転々としている。ここ数年感じていたことだが、今年はどの花も開花・見頃の時期が異常に思えるほど早い。皆さんも桜の開花の早さなど、記憶に新しいところだろう。こうなると撮影に行くタイミングが難しいのだが、何とかその恩恵にあずかっている。

行くといつも思うのは、手入れをなさっている方たちがいることだ。桜のようにその事実が分かりにくいものもあるが、皆さんが集まる公園や寺社などの花畑には必ずいるものである。観賞だけではなく撮影もさせていただいている身としては、忘れてはならないことである。

事情が招く行動は身勝手か否か

感謝とは別の意味だが、どうにも忘れられない出来事がある。今年のバラ苑で目の当たりにしたことだ。苑内を歩いていると、老夫婦が現れた。ご主人はどうやら全盲のようで、奥様が咲いている位置を教えているらしい。するとご主人はバラをもぎ取り、指先で擦ってバラバラにして捨てたのである。

あまりの驚きに唖然としたのだが、次のバラをもぎ取ったところで抑えきれず、やめてほしいと口から出てしまった。すると奥様は「こうしないと花を感じられないんです」とキレ気味に言い返してきた。しかしながら、相手は香り高いバラである。「香りで感じることはできないのですか」と言うと、捨てゼリフを残して去っていった。

敢えて言うならば、確かに目が見えないことは不幸かもしれない。だからといって、咲いているバラをもぎ取ってもいいという理由になるのだろうか。花も生きているのである。今でも釈然としないのだが、自分の言動に間違えはなかったと信じたい。

バラに限らないことだが、花を掴んで自分の鼻に押し当てている方をよく目にする。それも是非やめてほしい。あなたの目は見えているのですよね?

サポーター

SHINYA MATSUMOTO
SHINYA MATSUMOTO
フォトグラファー。 趣味の風景写真が高じて、写真の世界に転身。ブライダルカメラマンとして人物撮影を学んだ後、現在は独立。
前景・背景を活かした人物写真、「表情」を引き出した風景写真を意識し、将来は両者の融合を目指す。
プライベートでも撮影を楽しみ、写真撮影においては大抵のことは苦にならない。

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