自分らしく

感染症という不条理な災禍の下で

武漢肺炎の所為で自粛が求められた緊急事態宣言は5月25日に解除されましたが、まだまだ自粛生活が続いております。志村けんや岡江久美子という才能が失われたことは未だに信じられず、今となっては彼らの運の悪さを恨みます。そういうことも含めて苦しい毎日が続きますね。

「制限」されるということを、洋の東西を問わず人は「苦」と感じ、それがストレスにつながるのだと思います。そうしたなか、米国では警官の黒人虐殺で暴動が起こり各地に飛び火するという大問題となっています。黒人男性が白人警察官に殺されたのが原因ですが、もともと人種や宗教など複雑な対立的構図があって、きっかけがあれば「どこでも、いつでも、何度でも」起こりえることなのですね。

なぜ人は対立するのか?

人はたくさんの欲望(欲求)を抱えて生きています。一人の欲望は他者の欲望を阻害するかもしれません。そこに「対立」が起こるのです。大きくみると宗教間や国家間の戦争も、小さく見ると欲望の対立なのだということがわかります。また、クリスチャンやムスリムにとってドグマ(神のメッセージ=教義)を守ることは、ある種の喜びを感じる幸福状態といえるのでしょうが、神ではなく人間の命令やルールに従うことは苦痛を伴います。だから、ストレスや対立が生まれるのではないかと私は思います。

たとえば、人間の罪とは「神の命令に違反すること」です。「汝、人を殺すことなかれ」に違反する行為は警官といえども赦されざる行為です。人がつくったルールよりも神がつくったルールが最優先される精神世界なのです。そしてそれは非難される対象となり、そこに対立が生まれます。

さて、日本ではどうでしょうか? 日本では仏教や神道を信じている社会といいますが、本来の意味での信仰ではなく習慣的に神仏を拝んでいる人がほとんどです。神殿での作法をどれだけの人が守り、畏敬と尊敬の念で祈りを捧げているでしょうか。また仏様と神様の違いを、いかほどの人が知っているのでしょうか?

若い世代を中心とする無神論的な世代では、欧米と同じように欲望どうしの「対立」がほとんどだといえるではないでしょうか。それが今の日本での「対立」だと思います。よく考えると「あれしたい。これしたい」という思いが「お互いの制限」を生んでさらなる対立を深めるという点は、コロナ禍の制限下でのストレスが起こす対立と同じことだと理解できます。

本来なら、日本人は神様や仏様を信じ、祈ることでそういったストレスや対立を回避してきたのではないでしょうか。たとえ習慣的であっても神仏を拝む(祈る)という行為はストレスの低減に繋がるので、対象はなんであれ「祈る」行為は必要だとつくづく思います。

仏教徒は消極的?

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など三大一神教の信者の最終的目的地は天国です。最後の審判の後、神に許された人は再生して、天国で永遠の生命を全うできます。一方、仏教徒は生きることの苦から逃れるために「成仏」(解脱)を目指し、達成した暁には「涅槃」で永遠の苦からの解放を得ます。涅槃では輪廻せず、いわば「永遠の死」をいただけるわけです。

そう考えると、キリスト教徒と仏教徒の信仰は真逆のベクトルを向いているように見えます。キリスト教では聖書の言葉を守り、神に言われたとおりに好きでもない隣人を愛し、異教徒を迫害して殺し合いながらも天国をめざす「積極的」なベクトルを感じます。
片や、仏教では長い長い生命のなかでの「四苦八苦」をなくすために善行(功徳)を重ね、成仏(解脱)をめざします。この生き方には、「消極的」なベクトルしか感じられせん。だけどよく考えてみると、涅槃という境地(苦からの解放)への「憧憬」こそがその原動力となり、自力であれ他力であれ、一丸となって永遠の死をめざす姿勢に「究極の積極性」を感じるのは私だけではないと思います。

仏教的考え方で対立がなくなる?

仏教は、お釈迦様が経験した「成仏」(解脱)をあなたもやりませんか、という苦からの解放をめざす「生き方の教え」です。そういう意味では、私もあなたもみんなが成仏できる可能性をもっている(仏性があるという)という思想なのです。みんな横並びなのです。そこには他人を否定する対立は芽生えようもないはずなのです。

ただ現実には、この世界ではお釈迦様ただ一人が成仏の達成者で、仏教界でもいろんな対立があるのは皆さんがご存じのとおりです。残念ですね。もしかしたら、涅槃でお釈迦様は「人間たちはもう気づくコロナ…」と思ってらっしゃるかもしれません。

サポーター

福田正文
福田正文
1955年、羊年の山羊座生まれ。
2017年、大阪でコーヒー焙煎卸会社を経営。現在はマンションに建て替えて「悠々自適になる」つもりが、そうでもない状況。
千葉市在住。千葉ではパソコンメンテとWEBサイト制作会社を経営。
趣味はパソコンの組立&再生、ピアノとギターの演奏、読書。

プロフィール