自分らしく

母の思い出を辿った旅

台湾到着の日

2019年4月24日、私は一人で台北の松山機場にいました。出発地の日本は摂氏13度。午前7時過ぎには機上の人。着陸直前の機内アナウンスで、台北が暑そうだという情報は得ていたものの、実際に入国してみると、彼の地は常夏の31度。うだるような空気に、思わず「うっそー」と声を上げたのでした。

メインイベントだった2日目

母は台北生まれの台北育ち。16歳の年に終戦を迎え、一家で引上げ船に乗り帰国した引揚者の一人です。台北での暮らしを幼いころから聞いていたこともあり、当時の台北の生活スタイルや総督府(現在は総統府)は、台湾に親近感を抱かせ一人旅を決断させるには充分でした。

到着の翌日、朝一で総統府内部を見学後、母が在籍していた台北市立第一女子高級中学(旧台北第一高等女学校)へ。学校は総統府と目と鼻の先。最初は、外観だけでも撮影できればと計画していました。しかし、体操着姿で敷地内をランニングする生徒さんの姿を目の当たりにすると、「校内を見なければ帰国してはならぬ」と思い始めたのです。

交渉スタート開始。ついに、私の熱い想いが英語科の先生に伝わり、構内の案内役を引き受けてくださいました。当時の校舎の一部が100年経過したことで重要文化財に指定されたこと。石碑や朝礼台、椰子の木々、校舎内の一部を垣間見ることができました。それらはすべて、戦時下当時のもの。石碑には日本語で「正しく 強く 淑やかに」と彫られていました。これは、母が在籍していたころの標語です。素朴な疑問を英語科の先生に投げかけてみました。なぜ破壊しなかったのかと。「歴史だから大切に残さなければ」と寧ろ誇らしげに淡々と、微笑みを浮かべながら説明してくださいました。そして小1時間の校内見学は無事に終了したのでした。校友会会長との出会いもあり、母がこの学校が大好きだった理由がほんの少し分かったような気がしました。

昨年の旅で今思うこと

3泊4日という短い旅でしたが、ローカルのバス旅、故宮博物館、市立美術館やお寺巡り、街を包む独特の香りに触れ、初めての台北旅を満喫することができました。コロナ禍の今、自由に日本国内を旅することすら憚られる状況だからこそ、改めて去年の旅を振り返ることができたようです。世界に安寧が戻ったときには、母を連れ再訪したいものです。

サポーター

田上ハル
田上ハル
東京都出身。
留学支援と日本語教育の両分野で活躍。留学分野では高校生の交換留学業界で25年以上、派遣と受け入れの業務を遂行。現在は、週4日、留学関係の仕事に従事。2017年に日本語教師資格を取得。日本語学校の他、地域のボランティアとしても日本語を教える。
1998年、父が膵臓癌で他界。趣味は仏像やJAZZの鑑賞、SMAP、美術館・博物館巡り。パワーの源は、美味しいお酒を飲むこと。

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