自分らしく
犬との暮らし(2)
てんかんの発作
前回、分離不安症を抱えるホームズとの出会いについてお話しましたが、彼にはもう一つ、てんかんの発作という問題もありました。後に、犬のてんかんはそれほど珍しい症状ではないと知りましたが、突然、全身が硬直し、四肢をバタバタさせている様子を初めて目の当たりにしたときには、「このまま死んでしまうのではないか」と思うくらい大変驚きました。
夫によると子犬のころから時折、発作を起こしていたようですが、発作の頻度が高くなっているように思い、近隣の検査設備のある比較的大きな動物病院で検査をすることになりました。
これって、市中引き回しの刑?
動物病院の入口でホームズと私が先に降り、夫が駐車場に車を止めて私たちのところに歩いてきたときのこと。見慣れない場所に連れてこられ、この先、自分の身に何か起きるのではという嫌な予感があったのでしょうか、ホームズが突然夫に向かって突進。不意をつかれた私は、リードを持ったまま背中から引きずられるようにズルズルと転倒し数メートル引き摺られ、飼い犬の検査前に飼い主が負傷するという事態に。シニア犬といっても体重26kgほどの雄犬のダッシュに到底かなうはずもなく、まるで時代劇の市中引き回しの刑のごとし。いつもと違う状況にあるときこそ、「分離不安症持ちであることを考慮に入れておかなければ」と後悔しました。
家族で決めたこと
てんかんは遺伝の可能性があるともいわれ、有効な予防方法もなく、原因はよくわかっていないということは事前に調べていました。しかし、検査の結果はやはり原因不明とのことで、「さらに精密検査をしたい場合は、大学病院に行くしかない」との説明を受けました。
ホームズには分離不安症の問題があるため、もし大学病院に預け、入院するような事態になると、精神的ストレスで容態が悪化するかもしれません。そこで夫と相談し、彼にとってこれ以上負担のかかることはせず、余程の重篤な状況にならない限りは家族と最期まで一緒に生活できるようにしようということに決めました。それからは発作が起きると、毛布で身体を包み、まわりの物にぶつかって怪我をしないようにし、発作が収まるのを見守るようにしました。たとえ病を抱えていても、やんちゃであっても、大切な家族の一員である犬との暮らしは、私たちにとって、かけがえのない時間となっていくのです。
サポーター
- アクセサリー作家。
子どもの頃から「装う」ことに興味津々。外資系企業勤務のかたわら、全身のコーディネートに欠かせないアクセサリーづくりを独学で始める。大人ならではの装いのアクセントでありつつ、気負わずにさらりと気軽に身に着けられるアイテムづくりを目指す。
被爆者であった父の悪性リンパ腫、大腸がんの10年以上にも及ぶ闘病に寄り添い、夫をも膵臓がんで失うという経験をもつ。
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