自分らしく

〈バレエへの招待〉名作紹介(11)『コッペリア』

『ロマンティック・バレエ』最後の作品

1870年にパリ・オペラ座で初演された作品で、クラシック・バレエに先駆ける『ロマンティック・バレエ』最後の作品といわれています。

舞台はポーランドのとある片田舎の村。気難し屋の老人コッペリウスは人形職人で、人間の若い女の子そっくりのコッペリアを作って窓辺に坐らせています。向かいの家に住む村娘のスワニルダはフランツと恋人どうしですが、そのフランツはどうもコッペリアに心を惹かれている様子。そこで、スワニルダと友人たちはコッペリアの正体を確かめるためにコッペリウスの家に忍び込みます。

家のなかは人間そっくりの人形たちであふれかえっていました。そこへフランツも忍び込んでくるのですが、コッペリウスに見つかり、眠り薬入りのワインを飲まされ、魂を抜かれかけます。コッペリアに化けたスワニルダは人形のふりをしてコッペリウスを翻弄し、大暴れの果てに人形たちをめちゃくちゃにしてフランツを助け出します。誤解が解けた二人は、無事結婚式を挙げるのでした。

『人形振り』が最大の見どころ

コミカルなストーリーをスピード感あふれる振付けでまとめ上げた作品です。民族舞踊も多く含まれ、第1幕に登場する『マズルカ』や『チャールダーシュ』の音楽は、バレエ・ファンでなくても耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

最大の見どころは、人間が人形のうごきをまねてぎくしゃくした動き(『人形振り』)で踊る第2幕の場面でしょう。コッペリウスが作った数々の人形が、スペイン、スコットランド、中国など、それぞれのお国柄を反映した躍りを人形として踊ります。

なかでもハイライトは、コッペリアに化けたスワニルダが最初は人形のようなぎこちない動きで踊るのですが、徐々に人間らしい動きになっていき、最後は呪縛が解けたかのようにはつらつとした動きでコッペリウスを翻弄する場面です。この幕の最後にバラバラになったコッペリアの体を抱きしめるコッペリウスの姿は、ちょっと哀れを誘います。

サポーター

加集 大輔
加集 大輔
お笑いバレエ・ライター。
子どもの頃からの憧れだったクラシック・バレエを30代から習い始める。この経験をもとにバレエ誌に寄稿するようになり、その後、バレエ関連のライターとして活躍中。

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