自分らしく

〈バレエへの招待〉(11)名作紹介 『くるみ割り人形』

クリスマスの定番

その内容からクリスマス前後に上演されることが多い『くるみ割り人形』。夢オチといってしまえば身も蓋もありませんが、これは少女クララがクリスマスの晩に見た夢の物語です。

クリスマス・イヴの夜、クララの家におおぜいのお客さんがプレゼントを持ってやって来ます。やがてパーティーが始まり、クララは父の友人ドロッセルマイヤーから『くるみ割り人形』をもらいます。ところが兄フリッツは、クララのくるみ割り人形を取り上げて壊してしまいます。

ドロッセルマイヤーが修理したくるみ割り人形を、クララは大事そうにかかえて眠りに着きます。ふと目を醒ますと時計が鳴り、それをきっかけにクララの体が小さくなりはじめました。やがて兵隊人形とネズミたちの戦いが始まり、くるみ割り人形とネズミの王様の一騎打ちになります。クララの助勢で勝ったくるみ割り人形は呪いが解けて美しい青年となり、クララをお菓子の国に招待するのでした。

ひたすら楽しく美しい夢の舞台

第1幕のパーティーのシーンや第2幕のお菓子の国に登場するさまざまなキャラクターの踊りは、どれも短いながらも非常に特徴的で印象に残ります。例えば第1幕の『ムーア人の踊り』や『アルルカンとコロンビーヌ』は、人間のダンサーが人形に扮して踊ります。

第2幕のお菓子の国で踊られるいろいろな国の踊りも見逃せません。『ロシア(トレパック)』は、曲が鳴っている間ずっと激しく動きまわる元気のいい踊りです。また『あし笛』は、うって変わって柔らかで滑らかな動きを主体にした踊りです。どちらの曲もCMやゲームの音楽として使われていますので、聞けば「ああ、あれね」とうなずかれると思います。

また、おおぜいのダンサーによって踊られる群舞も見どころです。第1幕第2部の『雪のワルツ』と第2幕の『花のワルツ』は曲の美しさとダンサーたちの一糸乱れぬ踊りの相乗効果で、とても幻想的な情景が舞台上に繰り広げられます。

サポーター

加集 大輔
加集 大輔
お笑いバレエ・ライター。
子どもの頃からの憧れだったクラシック・バレエを30代から習い始める。この経験をもとにバレエ誌に寄稿するようになり、その後、バレエ関連のライターとして活躍中。

プロフィール