自分らしく

初セミ

初セミ

たった一匹で
夏のカーテンを
開けてくれる

ジー
ジー
ジー

少しお休み

ジー
ジー
ジー

明日から夏休み

友だちが「夜遅くに犬の散歩をしていて、セミが羽化をしている姿を見つけた」と写真を送ってくれました。ぬけがらのそばにとどまっている透き通るような白の羽がとても神秘的でした。

セミの幼虫は、自分の成長とお天気などを察して羽化すべきときを決めるのでしょうか。そのときが来ると暗闇のなかで木に登り、脱皮する場所を決めたら背中をぱりっとやぶり、もとの自分を抜け出していくのでしょう。

きっと、細い足の一本一本を慎重に抜いて逆さになってしばらく待って、足が固くなると抜けがらにしがみつきながら、白く透けた羽をゆっくり伸ばし、羽がまたしっかりとするまでじっくりと待つのでしょう。

朝になって羽化したセミが飛び去っていくと、残ったぬけがらは空洞の爪を木の幹にかけたまま、盛んに鳴いている次の自分を動かない目で見上げていることでしょう。

道に落ちているぬけがらを拾うことがあります。自分の机の上に置いてみると、空っぽの空間にいた命の形が静かに残っているように思えます。

そういえば、昔、ザリガニを一匹捕まえてきて洗面器のようなもので飼っていました。ある朝、一匹のザリガニが二匹になっていてものすごく驚きましたが、よく見るとひとつは脱皮をしたぬけがらでした。

セミもザリガニも、からを破って過去の自分の形を捨てながら、新しく生きる…。季節は夏ですし、少し硬くなって窮屈な何かがあれば、思いきってパリッと破って夏空に向かって伸びをしてみるのもいいかもしれません。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール