自分らしく

氷の花 シモバシラ

「シモバシラを探しに高尾山に行ってきます」と言うと、たいていの人は「えっ、わざわざ?」と言われます。『シモバシラ』とはシソ科の植物で、高さ40~70cm程度の多年草です。8月下旬から10月上旬には、白い穂状の小さな花を咲かせます。そして、花が終わり葉が散ると残った茎もやがて立ち枯れてしまいます。冬になると地上部分は枯れてしまいますが、地中の根の部分はまだ元気で保水能力を保っています。

さて、この氷の花はどのようにできるのでしょうか? 氷の花は『シモバシラ』の根から吸い上げられた水分が枯れた茎からしみだし、冷たい外気に触れて凍っていくことで作り上げられます。凍らなければできないので、気温が氷点下にならなければ作られません。気温が氷点下になっても雨や雪が降っていたり、風が強い日は氷の花はできません。

午前中の気温の低い時間帯に見ることができますが、気温が上がってくると溶けてしまいます。氷点下になり条件が整っている日に何度も氷結を繰り返すので、季節が進むと茎はボロボロに裂けてしまって土も固く凍りつき、日に日に小さなものしかできなくなります。撮影当日も大きなものでも7~8cmくらいのものしか見ることができませんでした。

リボンやフリルのようだったり、薔薇の花のように巻いているものだったり、形はさまざま。繊細でアーティスティックな氷の花はひとつひとつが異なる形で咲きます。どんな小さなものもひとつひとつが異なる形なので、見ていて飽きません。冬の間(12月の中旬ころから2月まで)、条件が整った午前中の早い時間にしか見られない氷の花。毎年の楽しみです。

サポーター

峠原直実
峠原直実
スタイリスト、専門誌の原稿執筆、百貨店の服飾雑貨ディレクター、アパレルブランドのファッショングッズの企画、皮革問屋での商品開発など、フリーランスで活動後、2018年に株式会社ニッポン・スタイルを設立。
グリーンシーズンは沢登りに縦走、マウンテンマラソンに参加し、冬はバックカントリーと1年を通して週末は山を楽しむ。
料理も趣味。山でも美味しいご飯が食べたく、ライトウエイトの食材を探索。

プロフィール