乳がん生活:患者力:患者力アップのヒント

ゆっくり歩いて気づいたこと

しびれた足で歩く

抗がん剤治療の副作用で、けっこう足がしびれました。まわりのがん体験者の友人たちに聞いても、しびれは長く続いているようです。

家のなかならまだしも、困るのは外出先の駅の階段や長距離を歩くとき。フワフワとした感じで地面を足がつかむ実感がなく、まさに「地に足がつかない」感覚でした。歩くスピードもかなりゆっくり、約束の時間に遅れてはいけないと、かなり余裕をみて出かけるようになりました。

今まで気づかなかった景色

そんなわけで移動時間に余裕ができて、これまで見ていなかった景色を見ることになりました。約束の時刻に遅れないように、30分も早く着いてしまうこともしばしば。

でもそんなときは、駅のベンチに座って行き交う人たちを眺めたり、少し遠回りして公園の花々や落ち葉に目をやったりして、季節の移り変わりを知ることもありました。今まで早足で通り過ぎていた同じ道なのに、ゆっくりと下を向いて歩くと、「これまで大事なことを見過ごしていた」と教えてもらったような気持ちになりました。

勝ち負けから正解のない世界

仕事に没頭し、勝つか負けるか攻撃的に働いていた歳月、目標達成や正解を早く出すことを課せられてきたけれど、突然のがん告知から治療生活に突入し、ものごとの見方が変りました。正解がない場合や早くなくてもいいこと、できないことを認めること…それをゆっくり歩くことで気づくことができたように感じます。

サポーター

緒方佳美
緒方佳美
外資系企業数社を経て退社。
その後、乳がん発症。トリプルネガティブと診断され、術前抗がん剤治療、部分摘出手術、放射線治療を経験。家族にもがん体験者あり。治療中から、がんと仕事の両立支援や、がん体験者のための支援活動を考える。乳がん体験者コーディネーター(BEC)認定。
2018年10月、株式会社オフィスオガタ設立(人材紹介・コンサルティング業)。
多様性を認める社会形成への貢献を意識し、東北支援活動、地元の景観まちづくりの会での活動を通じて地域とのつながりも大事にしている。

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