自分らしく

かろやか

かろやか

さっき通りかかった
小学校の校舎から
ひびいていた
歌声を抱いて
空を見上げれば

今日のひこうき雲は
新体操のリボンになって
ねじれていました

もうすぐ卒業式

卒業式が近づいてきました。学校では卒業ソングを練習する声がかろやかに響き、外を通りかかる人々の心をそっと刺激します。

私の勤める大学は小さな大学なので、教員が全員の名前を呼び、一人ひとりが立ち上がる、そんな温かい卒業式の伝統がありますが、今年は感染防止の観点から専攻ごとに一斉に立ち上がるだけになりそうです。昨年は中止になりましたから、開催できることだけでもありがたいことです。保護者やお客様はなしでソーシャルディスタンスを保って行うことになる予定です。コーラス部の美しい歌声も無しになりますし、国歌、校歌は、なんと斉唱ならぬ、静聴と言うことになりました。卒業式に歌を歌わないなんて寂しいことです。

歌声と言えば、10年前、2011年の卒業式を思い出します。私は中学校の教員でした。大震災のあとで休校中でしたが「卒業式はなんとか挙行したい」と、下級生は参加しない形の式と決定しました。毎年、式のクライマックスでは全校合唱で「旅立ちの日に」を歌います。一番素晴らしい歌声はもちろん3年生。しかし一人ひとり証書を受け取ったそのあとの合唱で、中学校生活のさまざまな場面を思い出させる歌詞に多くの3年生が感極まり歌えなくなってしまうのです。すると「ここぞ」とばかり1年生2年生が大きく響く声で卒業生を励ますように、送り出すように歌い上げるのです。

しかし、下級生が参加しない卒業式で「旅立ちの日に」を支えるのは?…教師たちは前の週から自主特訓を始めました。大きな声には自信のある面々ですから、音楽教師におだてられながらかなり上手になりました。

式は東日本大震災で被災された方々への黙祷から始まりました。卒業生たちは、とんとんとんと段を上り卒業証書を受け取り、見守る家族の方向にすっとふりむいて背筋をのばします。自分を見つめる家族のいることのかけがえのなさを感じていたことでしょう。いつもは下級生が頑張っていた「旅立ちの日に」を、私たち教員が涙をこらえながら歌いました。

歌いながら、送り出す子どもたちがいなくなってしまった彼の地の先生たちのことを思っていました。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール