自分らしく

再会

再会

この秋初めての
金木犀の香りに
周りを見回す

急ぎ足の夜道で
虫の声に
はっとする

古くからの友だちに
声を
かけてもらったように

10月に入って本が読みたくなり、森絵都さんの『出会いなおし』を買いました。6つの短編はそれぞれ違ったテイストなのに共通するような感じもあって、通勤時間を楽しくしてくれました。

この本の解説を書いている中江有里さんが、表題作『出会いなおし』の本文から抜き出したのは次の文章です。

「年を重ねるということは、同じ相手に、何回も出会いなおすということだ。会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる」。

「おお~」と思って、すぐに最初のページに戻って第一話を読み直したくらい、腑に落ちる文章でした。

まさに、本日も6年前に大学を卒業した教え子の結婚披露宴に出席して、この感覚を味わいました。彼女とは研究室で2年間一緒に過ごし、また卒業後も進路の相談で再会しており、ストイックなまでによく勉強をする、芯の強い、そしてダンスを愛する美しい人だという印象をもっていました。しかし、パートナーの様子や二人で練り上げた結婚式の演出、ご家族や友人の語りなどから、さらに違った素敵な姿をたくさん知ることになりました。

ずっと付き合い続けて何度も再会している親友を思い浮かべると、初めて出会って過ごしたときには知ることのなかった魅力を加えながら、ますますその絆が深まっていると確信します。そして、これからも会えば会うほど、話せば話すほど彼女の姿は立体的になっていくのでしょう。そう考えたら、早速「久しぶりに一緒にご飯を食べよう!」と、メールをしたくなりました。

人間だけではありません。1年経って、季節が巡ってきて再会する風の香りや満月の色や大きさ、木々の姿などには、「ああ、今年も同じだ」という安心感に加えて、今年ならではの思いが湧き上がる“出会いなおし”があると感じます。秋の訪れをそんなふうにも味わおうと思います。

サポーター

みやもと おとめ
みやもと おとめ
詩人。
本業は体育大学・ダンス学科教員。大学生たちがダンスを好きになり、さらに自信をもって子どもたちにダンスを教えられる指導者として育つことを願い、教育と研究に取り組む。

プロフィール